笑ったときに歯茎が目立つガミースマイル。その原因として、骨格や筋肉、歯の大きさなどがよく挙げられますが、実は見過ごされがちな生活習慣である「口呼吸」も、ガミースマイルを助長する一因となりえます。本来、人間の呼吸は鼻で行われるべきものですが、アレルギー性鼻炎や扁桃腺肥大などによって鼻の通りが悪いと、無意識のうちに口で呼吸する癖がついてしまうことがあります。この口呼吸が常態化すると、口元や顔の骨格に様々な影響を及ぼします。まず、常に口がぽかんと開いているため、唇を閉じる筋肉である口輪筋が衰えていきます。口輪筋は、顔の表情筋の土台とも言える重要な筋肉で、これが緩むと上唇が歯を適切に押さえる力が弱まり、上の前歯が前方に傾きやすくなります。いわゆる出っ歯の状態に近づいていくのです。また、正常な鼻呼吸では、舌は上顎の天井部分にぴったりとくっついていますが、口呼吸では舌の位置が下がり、気道を確保しようとします。上顎に舌からの圧力がかからない状態が続くと、上顎の骨は横方向に十分に成長することができず、代わりに縦方向に間延びするように成長してしまう傾向があります。これはアデノイド様顔貌とも呼ばれる特徴的な顔つきに繋がり、上顎骨が縦に長いという、ガミースマイルの典型的な骨格的要因を作り出してしまいます。さらに、口呼吸によって口腔内が乾燥すると、歯肉炎を起こしやすくなり、歯茎が腫れて厚ぼったく見えることも、ガミースマイルをより目立たせる要因となります。このように、ただの癖だと思われがちな口呼吸が、筋肉の弛緩、歯並びの悪化、そして顎骨の不適切な成長という複数のルートを通じて、ガミースマイルの土壌を育んでしまうのです。もし、お子さんやご自身に口呼吸の傾向があれば、一度耳鼻咽喉科や歯科で相談することをお勧めします。