昔から、私は人前で思いっきり笑うことが苦手でした。友達と楽しい話をしていても、面白いテレビ番組を見ていても、心の底から笑いたいという気持ちにブレーキをかけてしまう自分がいました。その理由は、鏡を見るたびに気づいていた自分の笑顔にありました。笑うと、上の歯茎がにゅっと出てしまう、いわゆるガミースマイルだったのです。歯並びはそれほど悪くないし、顔の形も特別変わっているとは思わない。それなのに、なぜ私の笑顔だけこうなってしまうのだろうと、ずっと一人で悩んでいました。写真に写るときは、いつも口を固く結ぶか、作ったような微笑みでお茶を濁していました。本当の笑顔を見せられないことが、だんだんと大きなコンプレックスになっていきました。社会人になり、このままではいけないと一念発起し、専門のクリニックに相談に行くことにしました。精密な検査の結果、私のガミースマイルの原因は、骨格や歯の大きさではなく、上唇を上げる筋肉の力が非常に強いことにあると診断されました。無意識のうちに、唇を必要以上に引き上げる筋肉が過剰に働いていたのです。原因がはっきりと分かったとき、長年の悩みの正体が見えたような気がして、少しだけ心が軽くなりました。そして、私の場合、筋肉の働きを一時的に弱める注射による治療が効果的だろうと提案を受けました。治療は驚くほど簡単で、数日後、恐る恐る鏡の前で笑ってみると、そこには今まで見たことのない自然な笑顔の自分がいました。歯茎はほとんど見えず、上品に口角が上がっている。長年私を縛り付けていたコンプレックスの原因が、筋肉の過剰な働きという、自分ではどうにもできないことだったと知り、もっと早く相談すればよかったと心から思いました。今では、写真も笑顔で写れるようになり、何より人との会話を心から楽しめるようになりました。