顔や体にほくろがあるように、実は口の中、そして舌にも「ほくろ」ができることがあります。医学的には「色素性母斑」と呼ばれ、メラニン色素を産生する細胞(メラノサイト)が、粘膜の一部に集まってできた良性の母斑です。舌にできるほくろは、皮膚にできるものと同様に、通常は平坦か、わずかに盛り上がった黒色または褐色の点やシミとして現れます。大きさは数ミリ程度のものが多く、形は円形や楕円形で、境界がはっきりしているのが特徴です。痛みやかゆみといった自覚症状は全くなく、多くは偶然、鏡を見た時や歯科検診の際に発見されます。舌にほくろができる原因は、皮膚のほくろと同様に完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や、慢性的な物理的刺激などが関与している可能性が考えられています。口の中にできるほくろは、皮膚にできるものに比べて発生頻度は低いですが、決して珍しいものではありません。ほとんどの場合、この舌のほくろは良性であり、健康上の問題を引き起こすことはないため、特別な治療は必要ありません。そのまま経過観察となることが一般的です。ただし、注意が必要なのは、ごく稀に存在する悪性の色素性病変、特に「悪性黒色腫(メラノーマ)」との鑑別です。悪性黒色腫は、ほくろのがんとも呼ばれる非常に悪性度の高いがんで、口の中に発生することもあります。舌のほくろが悪性黒色腫と異なる点は、良性のほくろが長期間にわたって大きさや形、色に変化がないのに対し、悪性黒色腫は比較的短期間で大きくなる、形が左右非対称でいびつになる、色がまだらになる、出血や潰瘍を伴うといった特徴があります。舌にできた黒い点が、以前からずっと同じ状態であるならば、ほくろの可能性が高いですが、もし急に現れたり、上記のような変化が見られたりする場合には、専門医による正確な診断が不可欠です。