ボトックス注射を長期間にわたって定期的に繰り返していると、徐々にその効果が感じられにくくなる、あるいは全く効かなくなってしまうという現象が起こることがあります。これは「ボトックス抗体」の産生が原因と考えられており、長期的な使用者にとって無視できないデメリットの一つです。ボトックスの主成分であるボツリヌストキシンは、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質です。私たちの体は、外部から異物(抗原)が侵入してくると、それを無力化するための「抗体」を作り出す免疫システムを持っています。ボトックス製剤に含まれるタンパク質も、体にとっては異物と認識されるため、繰り返し注入されることで、それに対する抗体が作られてしまうことがあるのです。一度抗体ができてしまうと、次にボトックスを注入した際に、この抗体がボツリヌストキシンに結合してしまい、その働きを中和してしまいます。その結果、筋肉の動きを抑制するという本来の効果が発揮されず、「ボトックスが効かない」という状態に陥るのです。抗体ができるリスクは、一度に大量のボトックスを注入した場合や、短期間に何度も繰り返し施術を受けた場合に高まるとされています。特に、多汗症の治療などで広範囲に多量のボトックスを使用する場合や、効果を早く出したいがために推奨される施術間隔(通常3ヶ月以上)を守らずに頻繁に注射を打つ場合は注意が必要です。全ての人が抗体を持つわけではありませんが、一度できてしまった抗体をなくす方法は現在のところありません。そのため、もし抗体が原因で効果が出なくなった場合は、ボトックス治療を一定期間休止するか、あるいは他の治療法を検討する必要が出てきます。この抗体産生のリスクを低減するためには、信頼できる医師のもとで、必要最小限の量を、適切な間隔を空けて注入するという、基本に忠実な治療を受けることが極めて重要になります。